認知症ケアにタッチケアが役立つ理由|不安や緊張を和らげる関わり方

高齢の方に手を差し伸べる。
そんな出来事が
我が家ではわりと当たり前にあります。

私もつい先日も駅で
キャリーケースを引きながら
階段を降りようとしている
高齢の女性を見かけました。

足元がおぼつかず
キャリーケースを持ちながら
階段を降りるのはとても危なそうでした。

「お手伝いしましょうか?」
そう声をかけると
「ありがとう。本当に親切にしてもらって…。」
何度も何度もお礼を言ってくださいました。

たった数十秒の出来事。
私の方が心が温かくなる
ひとときでした。

またある日には
妹夫婦が夜道を
歩いている高齢の方を見かけたそうです。

「こんな時間に一人で歩いているなんて…。」
近くの施設の利用者さんかと思い
声を掛けたものの違いました。

なんと市の迷子情報で
アナウンス、メールがあった高齢者でした。

主人も以前
道に迷っているように見える
高齢の女性に声を掛け
一緒に覚えのある場所まで
歩いたことがあります。

大学生の娘も
困っている高齢の方に
声を掛けたことがあるそうです。

振り返ると
家族みんなが自然と
高齢の方と関わる場面に出会っています。

もちろん
全ての方が認知症だったとは限りません。

ですが、
「道に迷っているのかな。」
「何か困っているのかな。」

そう感じる場面は
これから超高齢社会を迎える私たちにとって
決して特別なことではなくなっていますよね。

目次

超高齢社会は、誰にとっても身近な問題

日本は今、超高齢社会。


かれこれ15年以上前に
介護のお仕事をしていましたが
その時から2025年の超高齢化社会のことは言われてて
もう現実になっている…
そんな感じです。。

65歳以上は約3人に1人。

認知症の方も
年々増え続けています。

介護のお仕事を
されている方だけではありません。

親が高齢になった。
近所のおじいちゃん
おばあちゃんが気になる。

スーパーや駅で
困っている方を見かける。

高齢者、認知症の方と関わる機会は
私たちの日常の中にも
増えてきています。

そして
そんな場面で出会ったとき

「どう声を掛けたらいいんだろう」
「何が正解なんだろう」
そういう声も増えたのですね。

「どうしてそんなことをするの?」と思ってしまう行動

認知症になると
何度も同じことを聞く。

財布を盗まれたと言う。
家に帰ると言って外へ出ようとする。
急に怒り出す。
介護を拒否する。
夜眠らず歩き回る。

そういう場面にも出くわすと思います。

「また同じことを言ってる。」
「どうしてそんなことをするの?」
「さっき説明したばかりなのに。」
そう思ってしまうこともあるでしょう。

介護をされているご家族なら
毎日繰り返されることで
心が疲れてしまうことも少なくありません。

ここで少しだけ
視点を変えてみてほしいのです。

認知症の方は「問題行動」をしているわけではありません

介護の現場では

暴言
徘徊
介護拒否
興奮
妄想

こうした行動は
BPSD(認知症の行動・心理症状)と呼ばれています。

「症状」と聞くと、
認知症だから仕方がない。
そう思われるかもしれません。

ですが実際には
その行動には背景があります。

例えば
「家に帰ります。」
と玄関へ向かう方。

周りから見ると
「ここが家ですよ」
と思います。

でも
ご本人にとっては違うのです。

今いる場所が分からない。

家族が見つからない。
昔暮らしていた家に帰らなければならない。

そんな不安や混乱の中で
「帰る」という行動に
なっていることがあります。

「財布を盗られた」
これも現場ではよく発せられました。

盗られたのではなく
どこへ置いたのか思い出せない。

「誰かが盗った。」
となることがあります。

介護を拒否することもあります。

着替えたくない。
お風呂に入りたくない。
手を振り払う。
怒る。

これはわがままなのでしょうか。

もしかしたら
目の前にいる人が誰なのか分からない。
何をされるのか分からない。
服を脱ぐことが怖い。

そんな不安や恐怖を
感じているのかもしれません。

私たちは
目の前の「行動」だけを見ると
問題に見えてしまいます。

でも、その奥には
「分からない」「怖い」「助けてほしい」
という不安な気持ちが
隠れていることがあります。

認知症の方も
周りを困らせようとしているのではありません。

自分でもどうしたらいいか分からないほど
不安や混乱の中にいるのです。

認知症ケアで大切なのは
行動だけを止めようとすることではありません。

「なぜ、この行動が起きているのだろう。」
そんな視点で
その人の心に目を向けることです。

そして
その不安に寄り添い
安心できる関わりを積み重ねていくことも
認知症ケアで大切なことです。

なぜ認知症の方に
このような不安や混乱が起こるのか



その背景から生まれる
BPSD(認知症の行動・心理症状)について
もう少し詳しくお話ししていきますね!

認知症の行動・心理症状(BPSD)は「困った行動」ではなく、不安のサイン

認知症の方に見られる

・怒りっぽくなる
・何度も同じことを聞く
・落ち着かず歩き回る
・介護を拒否する
・夜眠れなくなる
・幻覚や妄想が現れる

こうした症状は、
BPSD(認知症の行動・心理症状)と呼ばれています。

認知症だから起こる症状
と思われがちですが、
ちょっと違います。

BPSDは
認知症そのものが直接
起こしている症状だけではありません。

認知症による脳の変化に加え、
本人の性格や生活歴、周囲の環境、
人との関わり方、
不安やストレスなどが重なって
現れる症状だと考えられています。

認知症になったから暴言が出る
認知症になったから徘徊する
というわけではないのです。

例えば
私たちでも初めて行く病院で、
「ここはどこ?」
「あとどれくらい待つの?」
「検査は痛い?」


そんな不安な気持ちになった
経験ってありませんか?

さらに
財布も携帯電話もなく(わからず)
今が何時なのかもわからず
迎えに来る人も見つからない。

そんな状況なら
誰でも混乱しませんかね。

認知症の方は
そのような不安や混乱を
日常的に感じていたりするわけです。

「帰りたい」
「家族を探さなきゃ」
「財布がない」

そんな言葉や行動が出てきたりもするのです。

私たちには理解しづらくても
本人にとっては現実。

否定されることは
さらに不安を大きくしてしまうことがあります。

タッチケアが認知症ケアで役立つ理由

そんな不安を感じている認知症の方に
私たちは何ができるのでしょうか。

その一つにタッチケアがあります。
タッチケアは医療行為ではありません。
また、認知症を治すものでもありません。

でも
優しく触れられることで
人は安心感を得やすくなります。

手を包まれる。
背中にそっと触れられる。
肩に手を添えてもらう。

そんな何気ない
日常の中の触れ合いによって、

緊張が和らぎ
呼吸がゆっくりになり
表情が穏やかになっていく方も。

触れる刺激は
自律神経にも働きかけ
興奮状態からリラックス状態へ
切り替わりやすくなったり

また、温かな触れ合いは、
安心感や信頼感に関わる幸せホルモン
オキシトシンの分泌にも
関係していることが分かっています。

認知症の方にとって
「触れること」は、
言葉以上に安心を伝えられる
コミュニケーションになることがあるのです。

(もちろん
触れられるのが苦手な方もいますから
タッチケアの基本
《相手の許可を得る》ことですね)

タッチケアはこんな場面で取り入れることができます

タッチケアというと
特別な技術が必要だと思われる方もいます。

ですが、
日常生活の中で
取り入れられる場面はたくさんあります。

起床するとき

急に体を起こすのではなく
「おはようございます」


としっかりと相手の視界の中に入り
声を掛けながら
肩や腕に手を添える。

高齢者、認知症のタッチケアで大切なのは
視線を合わせるという以上に
視線をつかむというんでしょうか。



視力も視界も悪くなっているため
横からお声をかけていても
自分のことかわからなかったり


ましてや
認知症の方に後ろから
声をかけるのはびっうりして
逆に不安やドキドキになったりします。

しっかり
目があった!
そのうえでお声をかけていくのがいいかと思います。

「あなたに話しかけていますよ」
というのも伝わりますので。

更衣や入浴の前

突然服を脱がされたり
体を触られることは
認知症の方にとっては特に
恐怖になることがあります。

目線を合わせ、
「お着替えしましょうね」
「お手伝いしますね」

と伝えながら
手や肩に優しく触れることで
安心して受け入れられることがあります。

食事の前

「ご飯ですよ」
と声を掛けながら手を包む。

それだけでも気持ちが落ち着き
食事へ意識を向けやすくなることもあります。

タッチケアを行うときの注意点

高齢者の肌、皮膚はとても薄く
デリケートです。

強く押したり揉んだりする必要はありません。

・手のひら全体で優しく触れる
・急に触らず、必ず声を掛ける
・痛みや皮膚トラブルがある場所は避ける
・嫌がる様子があれば無理をしない

発熱、持病などの注意意外に
こうした基本を守ることが大切です。

また、認知症の方は特に
その日の体調や気分によって反応が異なります。

高齢者、認知症の方にかぎらずですが
昨日は喜ばれたことでも
今日は受け入れられないこと
これはよくあることです。

「今日は触れてほしくない日なんだな」
そう受け止めることも
大切なケアの一つです。

肌に触れることはイヤでも
声で、目で触れること。

そんなときこそ
【傾聴】話を聴いて寄り添う中で
手を握り締めてくださったり



会話のアプローチから
タッチケアになっていくこともあります。

さいごに|安心を届けることが、認知症ケアの第一歩

認知症ケアというと
症状を改善することや
介護をスムーズに行うことに目が向きがちです。

もちろん
それを願いますよね。
少しでも楽になりたいですもの。

その前に
忘れてはいけないことがあります。

それは
認知症になっても
「安心したい」
「誰かとつながっていたい」
という気持ちは変わらないということです。

私はタッチケアを通して、
たくさんの高齢者の方と関わってきました。

言葉が少なくなった方が
笑顔になったり。

表情が硬かった方が
穏やかな表情に変わったり。

そんな場面は
何度も見てきました。

タッチケアは
認知症を治すものではありません。

でも
不安や緊張を抱える方に
「あなたは一人ではない」
「大切にしてくれる人がいる」
そんな安心を届けることはできます。

忙しい毎日の中だからこそ
その数十秒のぬくもりが
お互いにとって
かけがえのない時間になる。


そういうことを
信じたいなって思います。


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